こうなる事は目に見えていた

人気の中で、関係が捏造されていく

この作品の特徴は何といってもカメラ男とパトランプ男の2人だ、盗撮する側と取り締まる側であることに変わりはないが、何といっても見た目のインパクトが計り知れない。見た目は人間、頭はカメラとパトランプ、この姿を見て印象に残らないという人はまずいないだろう。筆者も初めてこのCMを劇場で見たときには衝撃というか、吹き出しそうになった記憶がある。重要な内容が書かれているCMの筈なのだが、行動などがシュールすぎて笑いを呼び起こされそうになったので、非常に困ったものだ。

さて、この二人が登場したことによって当初は完全にネタとして扱われることになり、そのほとんどが笑いの種として用いられるようになった。しかしその後徐々にそのシュールな立ち回りと映画内容を見ている人の中には作品を見ているだけでよからぬことを想像する人が増えていった。いわゆる異形頭萌えというものになるわけだが、イラストSNS『Pixiv』ではこの二人の作品が書かれたものがたくさん出回るようになる。それだけ愛されていることに違いはないのだが、ここからがある意味想像力豊かな人々の脳内変換による捏造関係によって、元の2人の関係性が大きく揺らぎを見せることとなる。

どうしてこうなったと言いたい

ここで改めて2人の立ち位置について考えてみるとしよう、カメラ男は映画業界から見れば悪の権化であり、盗撮をすることで甚大な被害を招きかねない象徴的な敵と言える存在だ。そしてそのカメラ男を取り締まり、捕まえることを仕事としているパトランプ男は言うなれ業界と警察の意図を汲んだ正義の味方と、そのように見なしていいだろう。正義と悪、結末はCMでも分かっているとおり、最後にはカメラ男が逮捕される勧善懲悪ストーリーとなっているが、この話を見て違うことを考える人がいるからだ。

筆者がこの作品を見たときに思った当初こそ何も思わなかったが、人気を博していく中で業界そのものの思惑とは根本から違った『敵だからこそ惹かれあう』、そんな方向に流れていくことを危惧したが、それは非常に大きく波及して行くこととなる。そのあまりの熱狂から、なんとパトランプ男とカメラ男の2人を題材にした同人誌まで作られるようになったのだ。この時正直筆者としては中身を少し見てみたかったとも思ってしまったのは余談だ。どういう風に捏造されているのかと気になりはしたが、買うまでには至らなかった。

予想以上の人気の高さはこうしたところだけではなく、こんなところにまでその存在を知らしめることとなる。

劇場生フィルムが人気になる

最近の映像商業商品として発売されているブルーレイなどの商品において、劇場で使用された生フィルムが特典として封入されていることがある。その特典の中で、ある作品のフィルムの中にCMフィルムが梱包されていたと言うことがあった。

作品の何かしらのフィルムだと期待したら啓発CMだったので一時期は『外れ』と見なされてしまうが、逆にそのレアさによって大きな話題を呼ぶことになるのだ。後にそのフィルムこそ引き当てた方が当たりなのでは、といわれるようになると中にはオークションでそのフィルム欲しさに約10,000円という価格で落札される。このような事態になるなど誰が予想しただろうか、こうした巷の流れには業界関係者も戸惑いを見せていたことに違いない。

本来は法律について知ってもらうために作られ、商業用としては考えることはできないと見られていたがこうした人気を見てついにといったところで、カメラ男とパトランプ男の2人が満を辞して食玩用を始めとしたフィギュアとして商品として市場に出回ることになった。確かに予想とは裏腹の人気を獲得してしまったため、複雑な心境をしている人もいるかもしれない。結果よければ全て良しとまでは行かないが、法律を知ってもらうという意味では大成功だろう。

それでも映画盗撮は終わらない

こうした人気によって法律に関する知識などが広まったことは確かに大きな功績と見ていいが、それで映画盗撮が完璧になくなったのかといわれると微妙なところだろう。確かに劇場で撮影されたものが流出する機会は格段に減りつつはある、それも企業などが主要な動画サイトなどに目を光らせているからだ。何も知らずに挙げていると、動画サイト運営元に版元の会社から異議申し立てを受けることによって、ユーザーの意図に関係なく動画が削除されるようになるなど、かつては海賊版がそこかしこに流通していた時代と考えたら、まだいいほうなのかもしれない。

またこうした映画盗撮に関しては日本だけでなく、他の国でも時として罪に問われることになる場合もある。

法律が出来た後の映画盗撮例

アメリカの場合
アメリカでも同様に映画盗撮に関する法律が出来たことによって、ようやく映画盗撮を本格的に取り締まれるようになった。中には19歳の女性が携帯カメラで20秒程度撮影しただけで逮捕され、第一級軽犯罪として認定され、懲役こそ掛けられなかったものの、71ドルの罰金刑が確定した。
香港の場合
海賊版が横行していただけに、刑の内容には初犯の場合には最高で5,000香港ドルの罰金だが、再販の場合には最悪禁固刑3ヶ月に処されることもある。
イタリアの場合
日本と同様に2006年には本格的に映画盗撮に関する『公共安全法』が改正されたことで、映画盗撮が本格的に禁止されることとなった。

映画盗撮も根絶を目指して

日本のこうした動きと同様に世界各地でも映画盗撮という、洒落にならない被害を被ることになる事態に対して動きを強めている。日本だけで約200億円相当の被害を受けたというのに、これでもしも世界規模で考えたらどのくらいの被害総額になるのだろう。詳細な金額こそ興味本位で知りたくなるが、知ったら知ったでどれだけ深刻な問題だったのかを再認識できるのではないだろうか。

盗撮という問題を考えたとき、人的被害を受けていることを想像する人が多いかもしれないが、映画業界も盗撮を受け続けて早30年以上もの時間が過ぎている。この問題の闇はまだまだ世界に根を張り続けていることを克明に示している。

監視カメラから考える盗撮問題について